報告
入来花水木会  
『入来麓景観づくり講演会』
              日時 : 2024年01月21日(日) 13:30 ~ 15:30
              場所 :薩摩川内市入来文化ホール別館・視聴覚室
          
              参加者 25名〔内訳:入来花水木会会員10名(うち1名コミュニティ会長)
                伝健審議会会長(兼コミュニティ会長)1名、入来郷土歴史研究会7名
                第一工科大学先生3名、学生3名,、鹿児島県・景観アドバイザー1名〕


第1部

《講演題目》
歴史的まちなみにおける景観の評価手法についての一考察
  ~薩摩川内市入来麓重要伝統的建造物群保存地区を事例に~
          第一工科大学・建築デザイン学科2年 津田 優之介

《実施結果》
まず、第一工科大学建築デザイン学科2年の津田優之介さんから、入来麓武家屋敷群の馬場(町割りの基盤を成す街路)の景観画像を見たときの印象についてのアンケート調査を、入来麓地区でまちづくりを行っている入来花水木会の会員の方(および地元住民の方)と第一工科大学建築デザイン学科の学生に対して実施し、SD法による景観評価を行う研究方法について発表があった。


つぎに、まとめとして、西嶋啓一郎先生(第一工科大学教授)から以下のようなお話しとお願いがあり、入来花水木会会長の入来院久子から、入来麓の住民を含めて、第一工科大学の皆さんの研究に全面的に協力させて頂くので、宜しくお願いしたいとの挨拶があった。

 SD法の因子分析というのは、入来花水木会の方(および入来麓住民の方)と第一工科大学建築デザイン学科の学生に、入来麓の馬場(街路)の同一写真をみてもらって、なつかしいとか、あるいは明るいとか暗いと言った形容詞表現で印象分析をしてもらうものです。

生まれ育って慣れたところだから、当たり前に知っているつもりが、いろいろ切り取られると、違う見方もあるということもあります。入来花水木会の方(および入来麓住民の方)に形容詞分析の調査をさせてもらったものと、全く入来麓に来たことのない建築デザイン学科の若い学生に同じ写真を見て同じ印象分析をしてもらいます。

両者を比較すると、クラスターといって、領域に分かれます。それによって、こういう見方もあると言うことが分かります。なぜそんなことをするかと言いますと、これから空き地や空き家になる可能性があったり、あるいは石垣が何かの理由で壊れてしまって修理しないといけなくなったとき、人はどういうところを見ているのだろうか、入来麓の何を見ているのだろうかということが、より明らかになれば、その方向性を踏まえた上で修景できます。

これがデザインコードといって、建築の手法あるいは町づくり手法の一つです。ここに生れて何十年も住んでいる人の見方と新しい人の見方を混ぜることによって、町の持続可能性を追いかけて行く。皆さんにアンケートを取らしてもらって分析した結果は、5月に台湾で開催される国際学会で発表することになります。入来麓のことを国際的に知ってもらうのも狙いです。是非ご協力を宜しくお願い致します。

なお、5月の台湾での国際学会の発表で利用するため、ドローンを飛ばし入来麓の空から見た風景を撮って数理化したいので、ドローンを飛ばすときの立会いをお願いしたいとの要請があった。入来花水木会の会員で対応することになった。

第2部

令和5年度 第2回「県の景観アドバイザー制度による入来麓の視察」
テーマ:入来麓の景観づくりについて
      アドバイザー : 鯵坂 徹 先生
      職名:元鹿児島大学学術研究院理工学域工学系教授
      専門:建築設計、歴史的建築の保存再生、麓集落

《実施結果》
令和5年度の第2回の「県の景観アドバイザー制度による入来麓の視察」は、建築設計・歴史的建築の保存再生・麓集落がご専門の鰺坂徹先生にお出で頂きました。先ず、宮崎を含めて120ヵ所を調査された「麓」について、その歴史や特徴などをお話し頂き、伝建制度(伝統的建造物群保存地区の制度)の歴史、その事業と助成制度、県内の4つの重伝建地区の概要について講演頂きました。続いて、麓集落の古民家の特徴、日本の伝統建築、さらに重伝建地区の石垣や生垣、馬場と座敷との関係と言ったことのお話し頂き、『これからの入来麓における保全と活用』について提言を頂きました。

 入来麓について(所感)
 (1)不思議なのは、入来麓は生垣がどうも特定物件になっていないようである。生垣を環境物件で特定すると補助が出るはずである。
(2)公開物件ですばらしいのは、増田家住宅のほかに入来郷土館が公開されていることだ。入来郷土館に入ったお客さんは、皆喜んで帰るのに、入来郷土館が表に出ていないような気がしてならない。
(3)活用面では、飲食、宿泊がでてくると、少し活性化するのかなと思う。

特定物件の分布マップについて
 (1)これが特定物件の分布である。この資料はなかなかもらえなかった。クレームがあって、絶対に配らないで下さいと言われた。でも、加世田では全部看板に出ている。町の中に2つ文化庁の補助金でつくった看板があって、それに特定物件が全部出ている。出水も結構でていて、人の名前まででている。
(2)特定物件の分布マップがあると、まち歩きに便利である。古い家がここにあるというのがわかる。これからどうするかだ。

入来麓における保全と活用について(提言)

(1)基本的に今の流れは、人に来てもらうためには「歩いて楽しいまち」にすることが重要である。
(2)重伝建もあるし、景観計画もあるので、これを使って建築物は活用するということで、住宅、店舗、民泊という形がいいのかなと思う。住宅として若い人に貸すというのもいいのかな。
(3)今の入来麓をみると、食事、喫茶、買物という機能がない。ただ、宿泊は野町(商店街)との連携が必要ではないかなと思う。
(4)樋脇麓は結構建物が残っているので、そういう所との連携、周遊を考えたらどうかなと思う。
(5)中ノ馬場の道路の仕上げをグレード・アップする方法があるのではないかなと思う。知覧はアスファルトに見えるけど、チタンが入っていて道路は白い。そういったディテール(細部)の仕上げをやっている。
(6)一番手っ取り早いのは、国交省の「歴史まちづくり法」の補助事業等でやることだ。
(7)これから、中ノ馬場の歩行者優先道路化をやったらいいのではないかなと思う。他の街路は居住者専用道路でいい。
(8)中ノ馬場は、いま少し歩きにくい。反対があるかも知れないが、一方通行にしたらどうか。入来麓はぐるっと回れるので、皆と話し合って考えてみてはどうかなと思う。歩道幅が狭く、車イスや電動カーが通行しにくいので、一方通行にして、歩道の幅を広げたらいいのではないか。
(9)それと、電柱の地中化だが、知覧は地中化しないで、電柱を敷地の中に入れた。見えないところを電線が走っている。そうする方が安い。
(10)薩摩川内市入来支所の建物は、昭和の遺産として活用したらいいのではないか。電子決済がコンビニでできるようになり、支所の機能は今後減っていく。あれだけのスペースがあれば、郷土館を持っていくことも考えられる。
(11)郷土館にはあれだけのものがあって、訪れる人に感動してもらえているので整理拡充したらいい。
(12)清色城の遊歩道の整備はが望まれるが、なかなか難しいと思われる。

質疑応答
Q1.中ノ馬場は、30km/hの速度制限になっているが、とんでもないスピードで走ってくる。対策は。
A1.ハンプ(路を凸型に舗装し、事前にこれを見たドライバーがスピードを落とすことをねらったもの)やクランク(車の通行部分をジグザグにしたり、蛇行させたりすることにより、車のスピードを抑制しようとするもの)が考えられるのではないか。ただし、クランクは景観にそぐうかどうか皆で検討が必要であろう。

Q2.中ノ馬場は痛んでいる。補修舗装された後に電柱の地中化の要請は難しい。補修舗装の前だ。
A2.電柱の地中化は金がかかる。敷地内に入れる方を先に提案したらどうだろうかと思う。現在、下水がない。加世田では下水工事が始まっている。商店街の活性化のためである。店を始めようとしたら何人槽が必要と決まっている。住宅は5~7人槽だからそれで定員が決まり、店を開けないからである。


広報チラシ
(文責 : 入来花水木会事務局、2024.01.06) 
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