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入来花水木会 | ||
| 令和7年度 第2回 「県の景観アドバイザー制度による入来麓の視察」の実施結果
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| 第一工科大学の学生さん、先生には、入来花水木会主催の第1回入来麓たのしいまち歩き(2022年10月開催)に参加頂いたのを皮切りに、入来麓との交流を深めて頂き、入来麓の景観をテーマに調査・研究を行って頂いた。デザインコード、情報通信技術、データサイエンス、ドローンといった新しい技術を活用して調査・研究された入来麓の景観についての学術的成果を、沖縄琉球大学や台湾南台科技大学等における国内外の学会発表の場で発表された。今回、これまでの調査・研究の総括をして頂きながら、人口減少が進む今日の社会構造における景観まちづくりのあり方について、西嶋啓一郎先生にアドバイスして頂いた。 | |||||||||||||||
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(1)もともとあるがままにある自然の山や川といったものが景観だと思われがちであるが、人間が見て、頭の中あるいは心の中で噛み砕き、いわゆる咀嚼(そしゃく)して、言葉にしたり、絵にしたりするのが景観であり、風景である。要するに人間がいないと景観・風景はありえない。 (2)まちづくりとか、伝統的な建築物・建物とかいうものは、住んでいる人たちがそこの風景にどう向き合っているのかということが一番重要である。そこに住んでいる人がどんなデザインを、どんなものをそこに見たいのか、求めたいのかということが、今の時代は重要になってきている。 2.研究のフレームワーク(取組みの基盤)~ハイブリッドの役割 (1)まちづくりとか、都市計画ということにおいて、国や自治体が行う法律や制度つくりなどのトップダウンと、住んでいる人たちがこんな風にして欲しいとか、こういう町になりたいとか言うようなボトムアップとが、実はなかなかうまくかみ合わない、少しずれている。 (2)それをつなぐことが、住み続けられるまちづくりにつながる。トップダウンとボトムアップの両者をつないでいく仕組み(ハイブリッド)はないのかというのが、私の研究のフレームワークであり、ハイブリッドの事例を研究させてもらっている。 3.曲がり角にきた伝建地区の制度、観光の新しいステージ (1)1975年に制定されてから約50年経ち、伝統的建築保存地区(略して伝建地区)の制度のあり方が変わってきている(曲がり角にきている)。 (2)観光というものが今新しいステージに入っている。以前の観光は、温泉旅行でドンチャン騒ぎといった、いわば日本人の大人の観光、いわゆるマスツーリズムが、新型コロナでガラッと変わった。 (3)観光のあり方が変わって、そこの文化、歴史、あるいは人と触れ合うという、一過性でなくて、何日か滞在したいような、いわゆるカルチャーツーリズムに変わってきている。 4.鹿児島県の4つの伝建地区について (1)知覧が、一番観光客が多いが、泊まったり食事したりするところが少ない。建築基準法により、ホテルとか旅館とかつくれない。用途地域の変更とか考えてくれないと、せっかくのカルチャーツーリズム(知覧の場合は、新しいツーリズムとしてブラックツーリズムというのがある)の客に泊まってもらえない。知覧のまちづくりの人たちは、宿泊ができるようにする動きを行っている。*【ブラックツーリズムとは】=たとえば、広島、長崎、沖縄の語り部と触れ合い、娯楽ではなく歴史的教訓や悲しみを学び、平和を考える、「負の歴史」を持つ場所を訪ねる観光のこと (2)4つの伝建地区がそれぞれ持つ悩みを話し合うような協議会があったら良いのではないかと提案している。 5.これまでの入来麓についての研究について 2023年から第一工科大学の学生たちとまち歩きを始め、以下の研究を行ってきた。 (1)新しい技術であるドローンを使って、入来麓の馬場の石垣や家並みを、3D(3次元)の立体図としてデータ化できることを報告した。 (2)つぎに、入来麓の住民の方が、好きとか嫌い、きれいだとか汚いといった形容詞的なことについて、入来麓をどう感じているのか、聞き取りアンケートをお願いし、その結果を因子分析して定量データ化した。それを、3次元化した立体図に重ね合わせて、マッチングや違いを探ることで、新しいデザインに対する手法を探そうという研究を行った。 6.景観まちづくりとは (1)何のために景観まちづくりは必要なのか。だれでも生まれ育った故郷に誇りを持っている。今の変化する時代、生まれ故郷がなくなるような時代に、そのことをどう考えるのかを考えないといけない。 (2)今まで見られなかったものが、新しい技術であるドローンで見られるようになった。思いをつむぐ、つなぐということを新しい技術でどうやっていくかが我々の役割だと思っている。 (3)ここに住んでいる方、ここに生まれ育った方だけじゃなくて、ここに移り住んできて、ここが好きで、ここで住み続けていきたい、終の棲家にしたいという人たちが、ここをどう思っているのかをデータ化して方向性を見出して、それを新しい町づくりのデザインにつなげていけないかというのが、今の私の研究の取組みである。 (4)そして、それが、行政と住んでいる人たちの意識をマッチングさせることに役立たないといけない。住んでいる人が主役であり、行政はそれを応援する側だと思う。住んでいる人たちが、そこにプライドを持ち続けていけるかどうかである。 (5)皆さんが紡いできた思いや歴史を、次の世代の人たちがどう受け止めていけるのか、そのお手伝いをするのが「景観まちづくり」ではないだろうかと思う。 7.新しい技術を使った風景生成 新しい技術を使わないといけない。Goole Earthにドローンでとった点群データを埋め込むと、3D化して、立体化できる。回して見ることもできる。城山の正確な点群データをとって埋め込めば、城山をくるくる回してみることができる。風景生成はあるがままの自然ではない。人間が編集するものである。拡張現実(AR)は、例えば木を取り除いた城山の復元立体図をGoole Earthに埋め込むこともできる。また、水量があったころの樋脇川を復元できる。どんなだったかARで見てみたい。 8.結び (1)2025年に伝建制度が法制化されて約50年経ち、人口減少が進む社会構造のなかで、景観まちづくりのあり方について、住んでいる人たちのとらえ方が変わってきている。「売らない、貸さない、壊さない」という住民憲章が足かせになってきている。 (2)持続可能なまちづくりを進める上では、定住人口を増やすことから交流人口を増やすことへの政策転換が必要である。そのためには、そこの人や歴史、文化を知ってもらうための観光、いわゆるカルチャーツーリズムの観光が必要ではないか。 (3)交流人口を増やすためには、地域の人たちが自分たちの歴史について誇りを持って勉強することだけでなく、ドローンとかICT(情報通信技術)を使った新しい取り組みを今の若者世代を使って広めていくことが必要である。 最後に ここに住んでいる人が主役である。その主役の人たちはそれぞれ考え方が違う。それをどうやって、新しい入来麓の50年後、100年後につなげていくのかということは、今ここで皆さん方が考えないと、だれも考えてくれない。 |
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| 【ポスター】 | |||||||||||||||
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| (文責 : 入来花水木会事務局、2026.02.22) | |||||||||||||||
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